【2021年度介護報酬改定】サービス提供体制強化加算編【訪問看護】
こんにちは。訪問看護ステーションのぞみです。
今回は2021年1月18日第199回社会保障審議会(介護給付分科会)で発表された令和3年度の介護報酬改定の見直し事項のうち、訪問看護にかかわるポイントのひとつ「サービス提供体制強化加算の見直し」について、主に訪問看護師や医療関係者の読者さん向けに解説します。
(引用;令和3年度介護報酬改定における改定事項について,厚生労働省)
「サービス提供体制強化加算」とはどんな加算なのでしょうか?どの介護サービスにもある加算だということは知っているのですが……。
訪問看護師
サービス提供体制強化加算は簡単にいうと、利用者さんに提供されるサービスの質が一定以上保たれている事業所を評価する加算のことです。訪問看護では訪問1回単位もしくは月単位で算定することができます。
管理者前田
今回の介護報酬改定ではこのサービス提供体制強化加算において、
・単位数の変更
・新たな区分の追加
・算定要件の一部変更
などがあり、2021年4月から改定されています。
はじめにサービス提供体制強化加算とは何かについて、次に介護報酬改定で何が変わったのかを順に説明します。
【サービス提供体制強化加算】サービスの質向上を評価する
介護保険におけるサービス提供体制強化加算とは、
・訪問看護ステーション等が提供するサービスの質を上げるための取り組みを評価する
・サービスの提供体制をとくに強化し基準を満たし、かつ届出をした介護事業者が算定できる
加算のことです。
定期巡回・随時対応型訪問介護看護、夜間対応型訪問介護、訪問入浴介護、訪問看護、訪問リハビリテーション、通所介護、地域密着型通所介護、療養通所介護、認知症対応型通所介護、通所リハビリテーション、短期入所生活介護、短期入所療養介護、小規模多機能型居宅介護、看護小規模多機能型居宅介護、特定施設入居者生活介護、地域密着型特定施設入居者生活介護、認知症対応型共同生活介護、介護老人福祉施設、地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護、介護老人保険施設、介護療養型医療施設、介護医療院
このようにサービス提供体制強化加算は、訪問看護以外にも通所介護などほかに多くのサービスにおいて算定することができます。
【訪問看護】サービス提供体制強化加算の算定条件
訪問看護でサービス提供体制強化加算を算定するには以下のような条件が必要です。
・看護師等の総数のうち、勤続年数3年以上の者が占める割合が30%以上(改定前)
・訪問看護ステーションのすべての看護師などに対して職員ごとに研修計画を作成し、計画に従い、研修(内部・外部研修)を実施
・①利用者に関する情報の伝達、②サービス提供にあたっての留意事項の伝達、③看護師等の技術指導を目的とした会議を定期的に(おおむね月に1回以上)開催
※①②の伝達とは利用者のADLや意欲、利用者の主な訴えやサービス提供時の特段の要望、家族を含む環境、前回のサービス提供時の状況、その他サービス提供に必要な事項など。
・すべての看護師などに対し事業主が費用を負担する健康診断等を定期的(1年に1回以上)に実施
これらの条件をみたしたうえで、都道府県知事などに届け出が必要になります。
算定方法・算定額の違いがある
サービス提供体制強化加算の算定では、
・通常の訪問看護を提供した場合
・定期巡回・随時対応サービス事業所との連携により訪問看護を提供した場合
で算定方法・算定額がことなります。
・通常の訪問看護 6単位/回 (改定前)
・定期巡回・随時対応サービス事業所との連携 50単位/月(改定前)
となり、定期巡回・随時対応サービス事業所との連携ではひと月単位の加算になり、通常の訪問看護の1回あたりの計算との違いがあります。
さらに、これらの単位は要介護度における支給限度額の範囲外になるのもポイントです。
平成24年4月に施行された改正・介護保険法で新設されたサービス。訪問介護員または訪問看護師が要介護者の自宅を定期的に訪問し介護・看護を提供する24時間対応の介護サービスで「地域密着型サービス」に分類される。要介護認定1〜5の高齢者が対象となり、事業所と同じ市町村の住民が利用できる。1日複数回訪問が可能で、1回訪問にかかる時間は10〜20分程度。短時間の身体介護(食事介助、清拭介助、排泄介助)が中心。
(引用:厚生労働省 定期巡回・随時対応型訪問介護看護の概要)
このように訪問看護でサービス提供体制強化加算を算定するには、
①勤続年数
②研修の実施
③会議の開催
④健康診断
などの要件を満たす必要があること、通常の訪問看護と定期巡回・随時対応サービス事業所との連携では算定方法や算定額のちがいがあることがポイントです。
さてこれらは従来のサービス提供体制加算についてですが、次に2021年度介護報酬改定ではどこが変わったのかを解説します。
【2021年介護報酬改定】算定要件や単位数の変更が行われた
(引用;令和3年度介護報酬改定の主な事項について,社保審-介護給付費分科会,第199回R3.1.18)
2021年度の介護報酬改定ではサービス提供体制強化加算において、
・サービスの質の向上
・職員のキャリアアップを促進
の観点から、
・新たな最上位評価区分の新設
・区分の統合
・算定要件の一部見なおし
がおこなわれました。
【訪問看護】サービス提供体制強化加算の変更ポイント
訪問看護のサービス提供体制強化加算では、
・研修の実施
・会議の開催
・健康診断
の要件は変わらず、所属する看護師の勤続年数の違いから
・サービス提供体制強化加算Ⅰ
・サービス提供体制強化加算Ⅱ
と区分がわかれることになりました。
サービス提供体制強化加算Ⅰ:勤続7年以上30%
サービス提供体制強化加算Ⅰでは、
・勤続7年以上の者が30%以上 6単位/回
となり、定期巡回・随時対応型訪問介護事業所と連携して訪問看護をおこなっている場合は、
・サービス提供体制強化加算(Ⅰ)50単位/月
となります。
サービス提供体制強化加算Ⅱ:勤続3年以上30%
サービス提供体制強化加算Ⅱでは、
・勤続3年以上の者が30%以上 3単位/回
となり、定期巡回・随時対応型訪問介護事業所と連携して訪問看護をおこなっている場合は、
・サービス提供体制強化加算(Ⅰ)25単位/月
となります。
旧バージョンでは勤続年数3年以上の者が30%以上のみだったのが、勤続7年以上30%以上とより長い勤続年数を設定した要件が加わり、新しい区分がもうけられたわけです。
介護予防のサービス提供強化加算も算定要件は同じで、実際の算定ではサービス提供体制強化加算ⅠまたはⅡ、いずれか1つのみを算定することができます。
事業所によっては以前と同じ単位を算定するために7年以上の者が30%以上在職している必要があるため、算定要件をみたすことが難しくなることも考えられます。
サービス提供体制強化加算で留意するポイント
今回の介護報酬改定での訪問看護における変更点は看護師の勤続年数や単位数などがあったものの、シンプルでわかりやすいものでした。
最後にサービス提供体制強化加算のほかの要件をふくめて算定に留意するポイントを挙げます。
看護師の勤続年数
- 勤続年数は各月の前月末日時点における該当者で判定する
- 職員割合は常勤換算方法で算出した3月をのぞく前年度の平均で判定する
- 前年度実績が6月に満たない場合:届け出をする月の前3月の平均値を使用する。看護師割合は届け出をした月以降も毎月、直近3ヶ月の割合が所定割合を超える必要がある
- 30%を下回る場合は、ただちに都道府県知事などに加算取りやめの届け出が必要
- 勤続年数=訪問看護師の経験年数ではない
- 勤続年数とは、現在勤務する訪問看護ステーションや同一法人で経営するそのほかの介護サービス事業所や病院などで利用者に直接サービスを提供する職員として勤務した年数を含めることができる
研修の実施
- 研修計画は資質向上のための研修内容の全体像と研修実施のための勤務体制の確保をさだめ、個別の具体的な研修の目標、内容、研修期間、実施時期などを定めた計画を策定する必要がある
会議の開催
- 利用者の情報・サービス提供の留意事項:利用者のADLや意欲、主訴、サービスを提供したときの特段の要望、家族をふくめた環境、前回サービスを提供したときの状況など必要なことがらについて変化を動向をふくめて記載する必要がある
- 会議にはサービス提供にあたるすべての看護師などが参加する必要があるが、全員が一堂に参加する必要はない。いくつかグループに分けておこなうこともできる
- 会議はテレビ電話装置など活用しておこなうことができる。それには個人情報保護委員会・厚生労働省「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」、厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」などに対応していることが求められる。
おわりに
今回は2021年度介護報酬改定の訪問看護にかかわるポイントのうち「サービス提供体制強化加算」について解説しました。
サービス提供体制強化加算では、ご利用者へ提供するサービスの質向上の取りくみや人員の基準、定期的な研修の要件など要件をクリアすれば算定できる加算です。
訪問看護ステーションのぞみでもより良いサービスが提供できるよう要件を維持し適切な介護保険請求をおこない、群馬県嬬恋村や長野原町、草津町などの要支援・要介護ご利用者の在宅療養生活を支えられるよう引きつづき質の高い看護サービスの提供をおこなってまいります。
介護保険・医療保険・自費の訪問看護などご質問などありましたら、お気軽にご相談ください。
訪問看護ステーションのぞみ