【訪問看護】複数名の訪問加算とは?【介護・医療保険】
こんにちは。訪問看護ステーションのぞみです。(@houkan_nozomi)
実際の訪問看護というと、看護師1名が単独でご利用者の自宅や入居施設を訪問するというイメージが強いかと思います。
訪問看護は看護師さんひとりで行うものだと思っていました。
看護師さん2名とか、複数で訪問することもあるんですか?
読者さん
はい、複数名で訪問することもあるんです。
必要な場合には看護師と看護補助者などがペアになって2名で訪問看護を行うことも可能です。
訪問看護ステーションのぞみでも実際に複数名訪問を行っているんですよ。
管理者前田
そこで今回は、複数名でおこなう訪問看護について詳しく解説します。
複数名での訪問看護には色々なパターンがある
複数名でおこなう訪問看護は看護師1人で訪問するのではなく、看護補助者らとペアを組んで複数名でケアをおこなう訪問看護をいいます。
これにより、訪問看護の基本サービス費に加えて「複数名訪問加算」などの加算が可能となります。
でも、なぜ複数名で訪問看護を行う必要があるのでしょうか?
読者さん
主な理由は、ご利用者の心身の状態や症状によって看護師1人で看護を行うことが難しい場合があるためです。
その場合、複数名訪問によってサービス提供側の役割分担もでき、安全に、よりスムーズにケアを行うことができるのです。
管理者前田
複数名訪問看護は介護・医療保険の種別によって加算の算定要件や算定額に違いがあります。
- 介護保険
①複数名訪問加算(Ⅰ)・(Ⅱ) - 医療保険
②複数名訪問看護加算
③複数名精神科訪問看護加算
それぞれの加算内容をみていきましょう。
【介護保険】複数名訪問加算には(Ⅰ)と(Ⅱ)がある
介護保険請求でおこなわれる複数名訪問看護では、
- 複数名訪問加算(Ⅰ)
- 複数名訪問加算(Ⅱ)
の2種類があります。
加算(Ⅰ)と(Ⅱ)の違いは訪問者の職種
複数名訪問加算(Ⅰ)と(Ⅱ)の違いは、訪問者の職種が異なることです。
- 複数名訪問加算(Ⅰ)
2人の看護師等(保健師、看護師、准看護師又は理学療法士、作業療法士、もしくは言語聴覚士)による同時訪問 - 複数名訪問加算(Ⅱ)
1人の看護師等と1人の看護補助者による同時訪問
(平成30年4月の改定で新設)
実際は看護師と看護補助者がペアになって訪問看護を行う場合が多いかと思いますが、この場合は「複数名訪問加算(Ⅱ)」が算定されます。
看護補助者は看護業務の補助を行う
ここで気になるのが「看護補助者」とはどんな役割を担うのかではないでしょうか?
看護補助者は、訪問看護業務を主に行う看護師などの指導のもとで、
- 療養生活上の世話(食事、清潔、排泄、入浴、移動等)
- 居室内の環境整備
- 看護用品や消耗品の整理整頓
など看護業務の補助を行います。
看護補助者になるための資格要件(介護福祉士や介護職員初任者研修修了者など)はありません。
しかし、仕事上で知り得た秘密の保持や医療安全の点から訪問看護事業所に雇用されている必要があります。
ちなみに、訪問看護ステーションのぞみでは看護補助者4名が勤務しており、複数名訪問看護が必要なご利用者宅に看護師とペアになって訪問しています。
【介護保険】複数名訪問加算の算定要件
介護保険で複数名訪問加算が算定される場合には、以下のような要件があります。
- 利用者またはその家族の同意を得ている
- 利用者の身体的理由により1人の看護師等による訪問看護が困難と認められる
- 暴力行為、著しい迷惑行為、器物破損行為等が認められる
- その他利用者等の状況等から判断して、上記に準ずると認められる
上記の要件があり、かつ複数名訪問看護としてケアマネジャーが作成するケアプランに組み入れられる必要があります。
また介護保険にはそれぞれのご利用者が使える介護限度額があるため、その制限の中で複数名訪問看護が行われなければなりません。
介護限度額の範囲であれば、複数名で行う訪問看護の回数に基本的には制限がないのも特徴です。
【介護保険】複数名訪問加算の単位
算定される単位は複数名訪問加算(Ⅰ)と(Ⅱ)で異なります。
複数名訪問加算(Ⅰ)の場合
複数名訪問加算(Ⅰ)は、訪問者と同行者が
- 看護師
- 准看護師
- 保健師
- 理学療法士
- 作業療法士
- 言語聴覚士
のいずれか2名である必要があります。
算定額は
- 1回30分以上の訪問=402単位
- 1回30分未満の訪問=254単位
となっています。
複数名訪問加算(Ⅱ)の場合
一方で複数名訪問加算(Ⅱ)は、主となる訪問者は加算(Ⅰ)と同じく
- 看護師
- 准看護師
- 保健師
- 理学療法士
- 作業療法士
- 言語聴覚士
ですが、その訪問者1人に看護補助者が同行した場合に算定可能です。
算定額は、
- 1回30分以上の訪問=317単位
- 1回30分未満の訪問=201単位
となり、複数名訪問加算(Ⅰ)と比べて単位数は少なくなっています。
【医療保険】複数名訪問看護と精神科訪問看護加算がある
医療保険でも複数名で訪問看護を行う必要があるご利用者に対して複数名訪問看護加算を算定することができます。
対象となるご利用者の疾患や基本療養費の種類により、
- 複数名訪問看護加算
- 複数名精神科訪問看護加算
の2種類があります。
【医療保険】複数名訪問看護加算
医療保険の複数名訪問看護加算の要件や算定額についてみていきます。
複数名訪問看護加算の要件
複数名訪問看護加算が算定できる要件は以下の通りです。
2.特別管理加算の対象者
3.特別訪問看護指示書に係る指定訪問看護を受けている
4.暴力行為、著しい迷惑行為、器物破損行為などが認められる
5.利用者の身体的理由により1人の看護師等による訪問看護が困難と認められる
6.その他利用者の状態から判断して、上記のいずれかに準ずると認められる
特別な管理を必要とする利用者とは、上記の1.〜3.に該当する方で以下に該当する方が含まれます。
- 末期の悪性腫瘍
- 多発性硬化症
- 重症筋無力症
- スモン
- 筋萎縮性側索硬化症
- 脊髄小脳変性症
- ハンチントン病
- 進行性筋ジストロフィー症
- パーキンソン病関連疾患(進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、パーキンソン病(ホーエン・ヤールの重症度分類がステージ3以上であって生活機能障害度がII度又はⅢ度のものに限る))
- 多系統萎縮症(線条体黒質変性症、オリーブ橋小脳萎縮症、シャイ・ドレーガー症候群)
- プリオン病
- 亜急性硬化症全脳炎
- ライソゾーム病
- 副腎白質ジストロフィー
- 脊髄性筋萎縮症
- 球脊髄性筋萎縮症
- 慢性炎症性脱髄性多発神経炎
- 後天性免疫不全症候群
- 頸髄損傷
- 人工呼吸器を使用している状態
算定額は主訪問者と同行者の職種で異なる
医療保険の複数名訪問看護加算でも、看護師などに同行する者の職種によって設定額が違います。
また令和2年度の介護報酬改定より、同一の建物に居住するご利用者を複数名訪問する場合、ご利用者の人数によって算定金額が異なっているのも特徴です。
主たる訪問者は、
- 看護師
- 保健師
- 助産師
- 准看護師
として、同行者の職種により以下のような算定額となります。
【看護職員が他の看護師と訪問する場合・週1回まで】
同行者 | 同一建物内 1人 |
同一建物内 2人 |
同一建物内 3人以上 |
看護師 保健師 理学 作業 言語 |
4,500円/回 | 4,500円/回 | 4,000円/回 |
准看護師 | 3,800円/回 | 3,800円/回 | 3,400円/回 |
【要件④〜⑥に当てはまる場合・週3回まで】
同行者 | 同一建物内 1人 |
同一建物内 2人 |
同一建物内 3人以上 |
看護 補助者 |
3,000円/回 | 3,000円/回 | 2,700円/回 |
【要件①〜③(別表7.8、特別指示)に当てはまる場合・算定制限なし】
同行者 | 訪問回数 | 同一建物内 1人 |
同一建物内 2人 |
同一建物内 3人以上 |
看護補助者 | 1日1回 | 3,000円/回 | 3,000円/回 | 2,700円/回 |
1日2回 | 6,000円/回 | 6,000円/回 | 5,400円/回 | |
1日3回 以上 |
10,000円/回 | 10,000円/回 | 9,000円/回 |
【医療保険】複数名精神科訪問看護加算
精神疾患をもったご利用者に対して行われる精神科訪問看護においても、複数名での訪問看護が必要な場合、複数名精神科訪問看護として算定することができます。
複数名精神科訪問看護加算の要件
主治医が交付した精神科訪問看護指示書に「複数名訪問の必要性」が記載されているご利用者が対象です。
複数名訪問が必要かどうかの理由として、一時的な精神症状の悪化など以下のようなものが挙げられます。
- 暴力行為、著しい迷惑行為、器物破損行為等が認められる者
- 利用者の身体的理由により1人の看護師等による訪問看護が困難と認められる者
- 利用者およびその家族それぞれへの支援が必要な者
- そのほか(自由記載)
もちろん、ご利用者本人やご家族に複数名での訪問看護を行うことへの同意を得ていなければなりません。
複数名精神科訪問看護加算の算定額
主となる訪問者を看護師・保健師として、同行する者の職種によって異なる算定額が設定されています。
同行者が看護師・保健師・作業療法士の場合【1日の料金】
訪問回数 | 同一建物内 1人 |
同一建物内 2人 |
同一建物内 3人以上 |
1日1回 | 4,500円/回 | 4,500円/回 | 4,000円/回 |
1日2回 | 9,000円/回 | 9,000円/回 | 8,100円/回 |
1日3回以上 | 14,500円/回 | 14,500円/回 | 13,000円/回 |
同行者が准看護師の場合【1日の料金】
訪問回数 | 同一建物内 1人 |
同一建物内 2人 |
同一建物内 3人以上 |
1日1回 | 3,800円/回 | 3,800円/回 | 3,400円/回 |
1日2回 | 7,600円/回 | 7,600円/回 | 6,800円/回 |
1日3回以上 | 12,400円/回 | 12,400円/回 | 11,200円/回 |
同行者が看護補助者または精神保健福祉士の場合【1日の料金】
同一建物内 1人 |
同一建物内 2人 |
同一建物内 3人以上 |
3,000円/回 | 3,000円/回 | 2,700円/回 |
いずれの訪問においても精神科訪問看護は基本的に週3回までです。
しかし、別表第7(厚生労働大臣が定める、医療保険による訪問看護が可能な疾病)にあたる疾患や特別精神科訪問看護指示(頻回の訪問看護が必要)の場合は、精神科訪問看護の回数に制限はありません。
複数名訪問加算のポイント!
複数名訪問看護加算を算定するときは、以下のような点に注意が必要です。
①本人・家族に同意を得て記録に残す必要がある
複数名訪問加算、複数名訪問看護加算、複数名精神科訪問看護加算いずれも算定をするにはご利用者やご家族へ説明をして同意を得る必要があります。
さらに同意書にサインをもらったり、同意を得たことを訪問看護記録に記載するなど、あとから振り返って分かるように記録として残すようにします。
②主訪問者と同行者の職種が決められている
複数名訪問看護の加算要件では、訪問者や同行者の職種が決められており、要件に合致しないと複数名訪問として加算することはできません。
また複数名訪問であっても、事業所の都合(新規ご利用者へ挨拶や訪問看護師の紹介など)で複数名で訪問をした場合は加算できないことも注意が必要です。
おわりに
複数名でおこなう訪問看護のメリットは、訪問者の役割分担ができることで、とくに医療的ケア度の高いご利用者に対して安全かつ集中して看護ケアを提供できたり、たとえば体位交換などご利用者にかかる身体的負担を軽減できたりすることなどが挙げられます。
ただし複数名訪問ができるのは1人で訪問看護をすることが困難な場合に限られており、ただ単に看護師ら複数名で訪問しただけでは介護・医療保険ともに加算はできません。
訪問看護ステーションのぞみでも、主治医の指示のもとご利用者やご家族の了承を得られた場合に複数名での訪問看護を行なっており、主に看護師と看護補助者がペアとなって訪問看護を行なっています。
今後も、複数名訪問を行うことでご利用やご家族へ提供できる看護ケアの質が向上し、訪問看護のぞみの医療サービスにより満足していただけるよう、スタッフ一同努力をしていきたいと思います。
嬬恋村や長野原町、草津町の訪問看護や介護についてご質問等ありましたら、こちらよりお気軽にお問い合わせください。
訪問看護ステーションのぞみ
※写真はすべてイメージです。