自宅入浴をサポートする訪問入浴を徹底解説!【嬬恋村で受けられます】
こんにちは。
訪問看護ステーションのぞみです。
みなさん、「訪問入浴」という在宅介護サービスをご存知でしょうか?
訪問入浴って、自宅で入浴ができるように支援してくれる介護サービスって聞いたことあるけど…。
読者さん
その通りです!
自宅で一人で入浴ができない方や病気や障害があってデイサービスに通えない方などが利用されています。
嬬恋村でも訪問入浴サービスを受けることができるんですよ。
管理者前田
今回は、ここ嬬恋村でも受けられる訪問入浴について、どんな方が対象になるのか、費用や訪問入浴の流れなど徹底解説していきます!
訪問入浴とは?
訪問入浴とは、介護が必要な状態になっても、できるかぎり自宅で自立した日常生活が送れるよう、入浴の援助をおこなうことで体の清潔を保ったり、心や体の機能などを図ったりする介護サービスのことです。
訪問入浴は正しくは「訪問入浴介護」「介護予防訪問入浴介護」ともいい、介護保険制度で要介護や要支援と認定された方々が利用することができます。
要介護の方が受ける訪問入浴=訪問入浴介護
要支援の方が受ける訪問入浴=介護予防訪問入浴介護
このように、要介護と要支援の方が受ける訪問入浴は受けるサービスはほぼ同じですが、正式な呼び方が異なります。
実際の現場では「訪問入浴」と同じ呼び方で使うことが多いです。
通常の訪問入浴では、看護師1名・介護スタッフ2名(または1名)がチームとなってご利用者の自宅にうかがい、専用の浴槽を室内に入れて入浴の介助を行います。
訪問入浴を受ける回数はご利用者により異なりますが、週1〜2回訪問入浴を利用する人が多いかもしれません。
訪問入浴はご利用者や家族に喜ばれる在宅介護サービス
高齢や病気、障害などの理由により自宅や通所での入浴が難しい方にとって、自宅にいながら入浴ができるというのは嬉しいサービスでもあります。
実際に、訪問看護ステーションのぞみのご利用者も嬬恋村社会福祉協議会がおこなう訪問入浴サービスを利用されている方も多く、訪問入浴の日をみなさんいつも楽しみに待っていらっしゃいます。
訪問入浴を利用することはご家族の介護負担の軽減にもなり、そのような意味でも在宅介護には欠かせないサービスの一つといえるでしょう。
嬬恋村で訪問入浴が受けられる!
先ほども触れましたが、嬬恋村においても訪問入浴サービスを受けることができます。
嬬恋村社会福祉協議会に訪問入浴事業があり、主に要介護認定を受けてベッド上での生活が中心となっている方に対してサービスを提供しています。
利用できるのは、月〜金曜日の午前8時30分〜17時30分(休日除く)の間で、嬬恋村や近隣地域にお住まいの方で訪問入浴を検討したいという方は担当ケアマネージャー、もしくは直接電話にて問い合わせをしてください。
ちなみに訪問入浴を行っている事業所は、営利法人(会社)や社会福祉協議会などの割合が多く、それぞれの組織において入浴車を1〜2台を所有していることが多いです。
一つの組織が保有する入浴車は限られているため、それぞれの利用者のスケジュール調整が必要になります。
訪問入浴を受けられる対象者とは?
自宅で訪問入浴サービスを受けたいと思っても、希望するすべての人がサービスを受けられるのではなく、いくつかの条件があります。
・要介護(1〜5)の認定を受けている(もしくは要支援)
・主治医から入浴の許可が出ている
訪問入浴は介護保険制度における在宅介護サービスであるため、利用者は介護認定を受けて「要介護」の認定(もしくは要支援)を受けている必要があります。
(※要介護…日常生活動作を、自分で行うことが困難であり、何らかの介護が必要な状態にあること)
さらに日常生活動作(ADL)や病気・障害を考慮して主治医から自宅での入浴の許可が出ていることも前提条件となります。
要支援の人は訪問入浴は受けられないの?
介護認定を受けて要介護にはいたらない、要支援(1〜2)の方も訪問入浴を受けることはできるのでしょうか?
要支援の認定が出ている方も、条件によって訪問入浴を受けることができます。
(※要支援…日常生活動作は、ほぼ自分で行うことが可能。しかし、日常生活動作の他者からの介助などにより要介護状態となるのを防ぐために、何らかの支援が必要な状態のこと)
たとえば、自宅に浴室がなく、さまざまな理由で通所サービスが利用できないなどの場合です。
実際に要支援の方が訪問入浴サービスを受けるケースはそれほど多くなく、やはり要介護の方のほうが利用される人数は多いといえます。
いずれにせよ、要介護または要支援の方が訪問入浴を利用するには、まず主治医からの入浴許可があり、そこから担当のケアマネージャー(要支援の方は地域包括支援センター)に相談をしてサービスの導入の検討がおこなわれます。
訪問入浴はこのような方におすすめ!
要介護・要支援認定を受けていて、主治医からの入浴許可のある方が基本的には訪問入浴サービスを受けられるわけですが、実際に利用されているのは、以下のような方々が多いです。
・高齢や病気のためベッド上中心(寝たきり)の生活である
・1人での入浴だけでなく、家族介助での入浴も難しい
・自宅の浴室や浴槽が狭く、家族の入浴支援が難しい
・高齢や病気による体調の変化があり、看護師の支援がある中での入浴を希望している
高齢者や病気のある方にとっては入浴は想像以上に体力を使う活動であり、筋力の低下や歩行の不安定さなどから浴室での転倒事故などが起きやすくなることも指摘されています。
ご家族が入浴介助を行うにしても、本人の体調や転倒などに気をつけながら介助をするのは、介護する側にとっても大変な労力が必要となり、介護負担もかかってしまうことも。
「自宅で入浴がしたい」というご利用者の希望や、ご家族の介護負担の軽減のためにも、上述のような条件が当てはまる方は一度、訪問入浴を検討されることをおすすめします。
訪問入浴サービスを利用する実際の理由
ある調査では、訪問入浴介護を利用する理由として以下の項目が挙げられていました。
・家の設備では介助が困難(もしくは設備がない)54%
・家族や訪問介護の介助では困難なため 23%
・感染症や疾病等の理由で通所介護での入浴介助が利用できない 11%
さらにその他の理由として、
・外出拒否がある
・集合住宅で1階以上に住んでいる
・施設を利用して大勢の前で肌を露出したくない
・通所サービスにいくまでに車酔いを起こす
・両足に強い浮腫があり自宅浴槽に入ることが難しい
・特定疾病の難病があり、身体状況が不安定
といった理由も挙げられています。
訪問入浴サービスを受ける理由はさまざまですが、いずれにせよ入浴に関する本人や家族の負担を減らすためにサービスを受けることに変わりありません。
訪問入浴では介護スタッフだけでなく看護師も同行するため、入浴介助を受けるのと同時に健康チェックや入浴中の体調変化にも留意してもらえることも、実際に訪問入浴を利用する理由にもなっているともいえるでしょう。
気になる!訪問入浴にかかる費用
訪問入浴サービスを使うメリットなどがわかると、次に気になるのが費用ではないでしょうか。
訪問入浴にかかる費用は、
・要介護(訪問入浴介護)
・要支援(介護予防訪問入浴介護)
・行われるサービス(全身浴・部分浴・清拭など)
※通常は全身浴だが、当日の体調などにより部分浴や清拭に変更になる場合がある
など、介護区分や行われるサービス、地域などによって異なります。
- 訪問入浴1回あたりの自己負担額の目安
介護度 |
洗浄 範囲 |
1回あたりの費用 |
||
1割 |
2割 |
3割 |
||
要介護
|
全身浴 |
¥1,256 〜1,432 |
¥2,512 〜2,864 |
¥3,768 〜4,296 |
部分浴 または清拭 |
¥879 〜1,002 |
¥1,758 〜2,004 |
¥2,637 〜3,006 |
|
要支援
|
全身浴 |
¥849 〜968 |
¥1,698 〜1,936 |
¥2,547 〜2,904 |
部分浴 または清拭 |
¥594 〜678 |
¥1,188 〜1,355 |
¥1,782 〜2,032 |
介護保険制度では1割負担の場合が多いものの、ご利用者の所得によって2〜3割負担となる場合があり、さらにお住まいの地域や諸条件によって費用は変わります。
この表では、考えられる最小額〜最大額の負担額を示していますが、それぞれ1回あたりの費用になるため、週1回利用の場合は月に訪問入浴を受けた回数分の費用がかかることになります。
また、訪問入浴日の体調によって全身浴ができないと判断となった場合は、部分浴や足浴、清拭などに切替えることもあり、その際は利用料金が30%低くなるよう決められています。
ちなみに要支援の方の費用が、要介護の方に比べて低く設定されているのは、サポートするスタッフの数が少ないためです。
要支援の方に対する支援では「要介護状態にならないための介護予防を行う」ことが目的でもあり、入浴動作のうち自分でできるところは可能な限り行ってもらうというスタンスになります。
そのほかの訪問入浴費用の違い
以下のような場合でも訪問入浴にかかる費用が異なります。
・訪問するスタッフに看護師がいない場合(減額−5%)
※要介護者の体の状態が安定しているときなど
・要介護者の訪問入浴を看護師1名・介護スタッフ1名で行う場合(減額)
・地域加算、介護職員処遇改善加算(現行加算)、介護職員等特定処遇改善加算(特定加算)などの加算がついている事業が行った場合(増額)
嬬恋村のように山間地にある地域では、「中山間地域等でのサービス提供」として5〜15%の加算があります。
訪問入浴サービスを始めるときに事業所や担当ケアマネージャーから説明があると思いますので、詳しい費用について事前に確認をしておきましょう。
介護度から見る訪問入浴の利用人数とかかる費用
一般に訪問入浴は介護度の高い方が使うことの多い在宅サービスですが、介護度によってどのくらいの費用の違いがあるのでしょうか。
厚生労働省の統計(令和元年12月分)を参考に、ひと月に訪問入浴サービスを利用する人数とおおよその費用を介護度別にまとめてみました。
介護度 |
人数(約) |
ひと月の費用(1割の場合) |
要介護1 |
1,500人 |
¥5,630 |
要介護2 |
4,700人 |
¥6,020 |
要介護3 |
7,500人 |
¥6,450 |
要介護4 |
17,000人 |
¥6,680 |
要介護5 |
31,800人 |
¥7,370 |
要支援1 |
100人 |
¥2,530 |
要支援2 |
400人 |
¥3,930 |
この表から、介護度が上がるほど訪問入浴サービスを受ける人も多く、ひと月にかかる費用負担も多くなることがわかります。
介護度の高い方は入浴前後のケアや入浴介助に時間を要することも多く、かかる費用も高くなる傾向があるといえるでしょう。
この表はあくまでも統計上の計算になります。費用は介護度やケア内容などによって異なりますので、一つの参考にしてください。
訪問入浴の当日はどのような流れなの?
訪問入浴当日は、契約している予定時間に看護師1名と介護スタッフ2名(または1名、要支援の人の場合は看護師1名と介護スタッフ1名)が訪問入浴車(訪問入浴用の浴槽が載せられた車)で自宅にうかがいます。
なお事業所によっては、訪問するスタッフ人数にも変動がありますので、契約のときに確認をしてください。
浴槽を室内に運び入れるため、自宅に専用浴槽が入るのか心配になる方もいると思いますが、浴槽を置くスペースは畳2〜3畳分ほどあれば大丈夫といわれています。
また、室内に水がはねるのを防ぐために、浴槽周囲にはビニール製のシートなどを引いたりしますので、室内が濡れてしまうか心配という方も安心してくださいね。
訪問入浴の流れ
細かな流れは事業所によって異なりますが、大まかな流れを紹介します。
1. 健康チェック
入浴前に看護師が体温や血圧、脈などを測り、入浴ができる身体状態かを確認します。
発熱や血圧の異常などが見られた場合には、主治医に入浴可能か相談することもあります。
状態によっては全身入浴ではなく、部分浴や清拭のケアに切り替わります。
2. 浴槽移動・湯張り・脱衣
専用浴槽を室内に入れ、浴槽と入浴車のホースをつなげて浴槽内に湯をはります。
お湯の準備をしている間に、利用者の脱衣など準備を行います。
3. ベッドから浴槽に移動・入浴開始
お湯の準備ができたら、ベッドから浴槽に移動します。
自力での移動が困難な方は、スタッフ数名で体を支えながら移動の介助を行い、少しずつ体がお湯につかるようにします。
体の保温を高めたり、羞恥心を軽減したりするために入浴中は体にタオルをかけて行うなど配慮が行われます。
4. 洗身・上がり湯
お湯につかりながらシャンプーから全身の洗身まで行い、浴槽から上がる前に全身をシャワーで洗い流します。
5. 浴槽からベッドに移動・入浴終了
6. 着衣・健康チェック
ベッドに移り全身を拭いてから着衣を行います。
水分摂取や安静を保ったあと看護師が入浴後の健康チェックをおこない、体調の変化がないかを確認します。
7. 片付け
看護師が健康チェックをおこなっている間に、介護スタッフが排水や浴槽片付けをおこないます。
※訪問入浴では、看護師は医療行為は行うことができません。入浴を安全に行うための健康チェックや入浴介助のサポートを行うことがメインになります。
訪問入浴前後に医療処置が必要な方は、別の訪問看護師が入浴前後に伺って看護・医療ケアを行うこともあります。
訪問入浴にかかる時間は?
訪問入浴にかかる時間は、準備から片付けまで40〜60分程度で行っている事業所が多いようです。
入浴前(健康チェック・浴槽準備・脱衣):15〜20分
入浴:10分前後
入浴後(健康チェック・浴槽の片付け・着衣) 15〜20分
入浴時間が短く感じる方もいるかもしれませんが、身体への負担なども考えてあまり長湯はしません。
また、入浴後に軟膏をぬるなどの皮膚の保湿ケアや手足の爪切りなどが行われる場合には、訪問入浴の時間が延長する場合もあります。
訪問入浴で使うお湯や排水はどうするの?
訪問入浴に使うお湯は、ご自宅の水道水を利用したり、使用する訪問入浴車によっては搭載されている大型ボイラーで沸かしたお湯を浴槽につないで、常にモーターで循環させる形にして自宅の水道水やお湯を使わない場合もあります。(訪問入浴車による)
排水に関しては、基本的には自宅の浴室などで行います。
使用する水道水やお湯、排水に関しては、ご自宅の環境や自宅近くに入浴車が駐車できるかなどの環境にもよるため、訪問入浴サービスを利用する前に担当ケアマネージャーや訪問入浴担当スタッフなどとの打ち合わせが必須になります。
やっぱり入浴は気持ちがいい!入浴の効果とは
さて、ここまで訪問入浴の概要や流れについて説明をしてきましたが、最後に介護における入浴の効果について解説します。
とくに、ベッド上での生活が中心になっている方にとって入浴の効果は高く、かたまった筋肉や拘縮(こうしゅく=関節が動かしにくくなってしまうこと)している関節部分の緊張をやわらげてくれます。
ほかにも入浴の効果として以下が挙げられます。
・皮膚を清潔にして、保湿する
・水圧による全身のマッサージ効果がある
・血液の流れが良くなり、創部の回復を早める
・腹圧で横隔膜が上がり、呼吸の回数が増えて肺の機能が高まる
・足のむくみ(浮腫)が軽減する
・体全体の緊張を和らげて、夜間の眠りを助ける
・腎臓の働きが良くなり排尿が促される
これらを見ると、私たちが考えている以上に入浴が身体に与える影響は大きいといえるでしょう。
訪問看護の清潔ケアと比べて思うこと
実際に訪問看護の現場においても、訪問入浴やデイサービスでの入浴の効果を実感することがあります。
ベッド上での生活が中心のご利用者であっても訪問入浴やデイサービス通所での入浴を継続されている方は、皮膚色も良く、全身の清潔が保たれ、褥そう(床ずれ)などの創部もできにくい傾向があります。
万が一、褥そうなどの創部ができてもその後に適切な処置を行えば、創が治るまでも時間はそう長くはかからないケースが多いといえます。
訪問看護でも清潔ケアとして全身を拭いたり、ベッド上での洗髪や更衣、パッドの交換などを行いますが、丁寧に清潔ケアを行ったとしても、やはり身体の機能への影響という意味では入浴の方が効果が高いといわざるを得ません。
入浴には、私たちが考えている以上に温熱や水圧の作用など心身の機能を回復させる効果が高いといえます。
さらにもう一つ、訪問入浴の効果として大きいのが、訪れる看護師や介護スタッフとの関わりによって得られるものです。
訪問入浴を通して、訪れるスタッフと会話やコミュニケーションをとることが、ご利用者の心身状態の安定にもつながっているともいえるでしょう。
訪問入浴は重要な在宅介護サービスの一つ
在宅介護サービスの一つである訪問入浴は、自宅や通所で入浴がおこなえない方にとっては、ぜひ利用したいと思う介護サービスです。
看護師や介護スタッフのケアを受けながら自宅で入浴ができるため、ご利用者やご家族も安心してサービスを受けることができます。
訪問入浴サービスを検討したい方は担当ケアマネージャー、要支援の方は地域包括支援センターなどに相談をしてみてください。
訪問看護ステーションのぞみでも、訪問看護サービスの一つとして、ご自宅の浴槽を使った「入浴介助」を行っていますが、今回紹介した訪問入浴介護とは異なるサービスとなります。
訪問看護の入浴介助については、また別の機会で解説していきたいと思います。
訪問看護についてご質問がありましたら、こちらよりお気軽にお問い合わせください。
訪問看護ステーションのぞみ
>>参考資料
厚生労働省訪問介護及び訪問入浴介護(参考資料)
厚生労働省平成30年度 介護給付費等実態統計の概況
公益財団法人長寿科学振興財団 健康長寿ネット「訪問入浴介護とは」
平成27年度老人保健事業推進費等補助金 老人保健健康増進等事業「訪問入浴介護の実態調査及び医療連携と業務の効率性についての調査研究事業報告書」平成28年3月