【2021年度】介護報酬改定で訪問看護はどう変わった?【機能強化編】
こんにちは。訪問看護ステーションのぞみです。
今回より、2021年1月18日第199回社会保障審議会(介護給付分科会)で発表された令和3年度の介護報酬改定の見直し事項のうち、とくに訪問看護にかかわるポイントをシリーズでまとめていきます。
♦介護給付分科会:社会保障審議会であつかう分野のうち、3年ごとの介護報酬の改定内容について議論をおこなう分科会。有識者や業界団体の代表、自治体代表などによって構成される。
そもそも「介護報酬」とは訪問介護・看護などの介護保険サービスを提供した事業所に支払われる料金のことで、サービス内容や要介護度、事業所所在地などによって支払われる金額は異なります。
また介護報酬はご利用者が所得に応じて1〜3割を負担し、残りは保険者である市町村が介護給付として事業所に支払われる仕組みになっているのも特徴です。
2000年から介護保険制度が始まり、3年に一度のペースで介護報酬を改正することが決められています。
そして今年、介護報酬の改正が行われました。
介護報酬の見直しはご利用者が負担する額にも関わってくるため、一度じっくりと説明させていただければと思います。
管理者前田
訪問看護にかかわる主な改定ポイントは4つ
介護報酬の改定内容はたくさんの分野にわたるため、訪問看護にかかわる主な改定ポイントを4つに分けて紹介していきます。
2.退院当日の訪問看護
3.看護体制強化加算の見直し
4.サービス提供体制強化加算の見直し
今回の記事では介護報酬の改定のうち「訪問看護の機能強化」に関わるポイントを解説していきます。
管理者前田
訪問看護の基本報酬の見直しが行われた
ご利用者に訪問看護サービスを提供するときには介護度やサービスを提供する時間などによって、介護報酬がそれぞれ「単位数」として決まっています。
今回の改定では訪問看護の機能をより強化するために「基本報酬」の見直しがおこなわれ、看護師によって実施される訪問看護・介護予防訪問看護ともに単位数が1〜3単位引き上げになりました。
繰り返しますが、基本報酬とは訪問看護や訪問介護、施設などの事業所ごとに決まっている介護報酬の基本的な単位(料金)のことです。
そのため「基本報酬の単位が引き上げられた」ということは、事業所に支払われる料金が増えることを意味しています。
さらに、すべてのサービスで令和3年4月から9月末までの間、新型コロナ対応の臨時特例として基本報酬に0.1%上乗せすることも決まっており、これも大きな方針といえるでしょう。
基本報酬の引き上げは訪問看護の機能をさらに強化することに実際につながります。訪問看護ステーションのぞみでもこの見直しを受けて、重症度の高い・医療処置が必要なご利用者などにより力を入れて取り組むことへの促しと受け止めています。
管理者前田
リハビリ専門職がおこなう訪問看護の見直しと改定
さて、ここまでは看護師がおこなう訪問看護の改定内容でしたが、リハビリテーション専門職がおこなう訪問看護についても改定が行われました。
訪問看護は看護師だけができると思っていたんですが、リハビリ専門職の方も訪問看護をおこなえるんですか?
読者さん
実は、訪問看護は看護師だけでなく、以下のリハビリ専門職も訪問看護ステーションに所属している場合「訪問看護」を行うことができます。
・作業療法士:食事や家事といった日常生活動作などを「作業」ととらえ、病気やけが・障害で日常生活に支援が必要な人に対して、作業を通じて心身の機能の維持や改善を図る専門職
・言語聴覚士:言葉によるコミュニケーションに機能的な問題がある人に発声やコミュニケーションの取り方などの専門的サービスを提供する職種。食事や飲み込みなどの機能回復も支援する「話す、聞く、食べる、のスペシャリスト」
これらのリハビリ専門職がおこなう訪問看護は、主治医が「利用者には看護と共にリハビリが必要である」と判断した場合、訪問看護指示書にもとづく「リハビリ専門職がおこなう訪問看護」として認められています。
一方で、リハビリ専門職がおこなう「訪問リハビリテーション」もあり、これは病院や診療所、介護老人保健施設に勤務しているリハビリ専門職がおこなう訪問サービスとなります。
今回の介護報酬改定では、訪問看護ステーションに所属するリハビリ専門職がおこなう「訪問看護」において大きな改定(単位数の引き下げ)と算定条件の追加がありました。
【リハビリ専門職】訪問看護の単位数が下がった
訪問看護の機能強化のひとつとして、リハビリ専門職による訪問看護サービス提供の評価が見直された結果、訪問看護・介護予防訪問看護の介護報酬である単位数が下がりました。
・介護予防訪問看護(1回につき)287単位⇨283単位
看護師による訪問看護の基本報酬は上がった一方で、リハビリ専門職による訪問看護の単位数は減ったというわけです。
1年以上利用の要支援者への訪問看護も単位数が下がった
さらにリハビリ専門職がおこなう要支援者への訪問看護は、サービスの利用が1年以上の場合、1回の訪問につき5単位が減算されることになりました。
また、これまで1日3回以上(60分間訪問以上)の場合には、リハビリ専門職による訪問看護は1割減算(90/100)であったものが5割減算(50/100)になり、算定がより厳格化されたといえます。
これらの改定は、要支援1・2のご利用者に対しておこなうリハビリ専門職の訪問看護を、長期的な視点から内容を改める目的がみてとれます。
リハビリ専門職の訪問看護を算定する要件が追加された
以下の算定の部分でも、リハビリ専門職の訪問看護について要件が新たに追加されました。
これは条件を満たさないと「リハビリ専門職がおこなう訪問看護としてみなされない」というわけです。
実施した訪問看護内容を訪問看護報告書などに添付する
看護師がおこなう訪問看護では、実施した訪問看護の内容について「訪問看護報告書」に記載することが求められています。
リハビリ専門職がおこなう訪問看護でも、実施した内容を訪問看護報告書に記載することが算定要件として追加されました。
訪問看護報告書だけでなく、訪問看護計画書や訪問看護記録書(訪問看護の内容や家族への指導など)にも記載が必要になります。
訪問リハビリ対象者の範囲を明らかにする
そもそも訪問リハビリテーションは「病院などに通っておこなうリハビリだけでは、家屋(自宅や施設)内でおこなうADL(日常生活動作)の自立が難しい」と考えられる利用者に対して行われるもの、というルールがあります。
このルールがリハビリ専門職による訪問看護にも適応され、訪問看護を受ける対象者をよりしっかりと見きわめることが必要になりました。
以上のようにリハビリ専門職の訪問看護に対する改定は厳格化されましたが、これはリハビリ対象者を明確にした上で、とくに要支援者に対してなるべく短期間で計画的に関わることなどがより強く求められた結果といえそうです。
介護報酬改定で訪問看護の機能強化がうながされた
今回は2021年度の介護報酬改定で「訪問看護の機能強化」のひとつとして行われた、基本報酬の引き上げやリハビリ専門職の訪問看護の改定などをあわせてご紹介しました。
訪問看護の必要性がより注目される中で、訪問看護ステーションのぞみでも今回の介護報酬の改定を真摯に受けとめ、日々の仕事に取り組んでいきたいと思います。
訪問看護の費用について質問等がありましたら、いつでも気軽にご相談ください。
訪問看護ステーションのぞみ
参考サイト
令和3年度介護報酬改定の主な事項について
令和3年度介護報酬改定における改定事項について
厚生労働省「令和3年度介護報酬改定に関する審議報告」