【2021年8月開始】認定薬局制度とは?【地域連携薬局編】
こんにちは。訪問看護ステーションのぞみです。(@houkan_nozomi)
さて「薬機法」をご存知でしょうか?
薬機法は医薬品や医療機器などの品質や有効性、安全性をさだめた法律のことです。
正式名称を「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」といいます。
この薬機法が2019年11月に改正されたことにより、今年8月から「機能別薬局の認定制度」(以下、認定薬局制度)がスタートしました。
「薬機法」はどこかで聞いたことがあるんですけど、認定薬局制度ってどんな制度なんですか?
読者さん
認定薬局制度とは特定の機能をもつ薬局を「地域連携薬局」や「専門医療機関連携薬局」として認定する制度なんですよ。
管理者前田
地域連携薬局や専門医療機関連携薬局の概要や役割についてはのちほど説明しますが、薬局の役割がより明確になることで利用者が自分に合った薬局を選びやすくなりました。
さらに、薬局にいる薬剤師もよりたくさんの場面で利用者や地域住民に貢献できるようにもなったわけです。
今回は認定薬局制度や地域連携薬局の概要、認定条件などついてくわしく解説します。
【認定薬局制度】特定機能をもつ薬局を評価
(引用:厚生労働省 薬機法改正概要資料等)
認定薬局制度では在宅医療や薬物療法(主にがんにかかわる治療)など特定の機能をもつ薬局を、
・地域連携薬局
・専門医療機関連携薬局
として都道府県知事が認定する制度のことです。
地域連携薬局は「かかりつけ薬剤師&薬局機能」をはたし、患者さんが入退院をするときは医療機関と情報共有をしたり、在宅で医療を受けるときは地域にあるほかの薬局とも連携して患者さんが継続的に安心して服薬できるよう支援します。
一方で、専門医療機関連携薬局のおもな対象となる病気は「がん」で、がんなどの治療をおこなう専門の医療機関と連携してより専門的・高度な服薬管理ができる薬局をさしており、常駐する薬剤師にも高い専門性が求められています。
制度では「患者のための薬局ビジョン」を具体化した
認定薬局制度は2019年11月交付された薬機法にもとづき新たにつくられたものです。
利用者が地域でも安心・安全に医薬品が使えるように薬局や薬剤師のあり方が見直され、それが法令化して少しずつ施行されるようになった経緯があります。
この流れのもとになる考え方が、厚生労働省が2015年に策定した「患者のための薬局ビジョン」です
(引用:厚生労働省「患者のための薬局ビジョン概要」)
「患者のための薬局ビジョン」では患者さんの服薬情報を一元的に管理するために「かかりつけ薬剤師・薬局機能」「健康サポート機能」などから成る、安心して服薬を継続できる体制をえがいています。
今回の認定薬局制度はこの「患者のための薬局ビジョン」で示された「これからの薬局にもとめられる機能」がより具体化した結果といえます。
認定薬局制度がはじまった背景とは
認定薬局制度が始まった背景には、
・高度な医療を受けながら在宅で過ごす患者さんが増えてきた
・住みなれた地域にいながら薬物療法を続ける状況がより求められている
・薬剤師・薬局が持つ服薬に関する専門性が地域包括ケアシステムのひとつとして期待されている
※地域包括ケアシステム=要介護になっても地域で生活できる体制づくりのこと
などがあります。
とくに考えなければならないのが、在宅医療を受ける高齢者には複数の薬を服用する方が多いことです。
その一方で、複数の薬を服用することで生じる副作用も懸念されています。
認定薬局制度ではこのような高齢者の服薬や薬物療法に対する安全性も高めたいという背景があります。
さらに今後確実にむかえる「超高齢社会」や医療のさらなる発展で在宅医療がより高度に複雑化していくことも簡単に想像できます。
在宅医療のこれからの状況を考えると地域の薬局でとり扱う医薬品も複雑・多様化していくため、認定薬局制度によってより専門的に地域住民を支えることができる薬局が今まさに求められているわけです。
【地域連携薬局】が「かかりつけ薬局・薬剤師」となる
ここからは地域連携薬局をより詳しく解説し、専門医療機関連携薬局については別の記事で紹介します。
地域連携薬局は利用者が入退院するときに薬局と医療機関などで服薬にかかわる情報を共有したり、在宅医療を受けるときには地域にある他の薬局と連携したりしながら継続的に服薬できるよう支援する薬局のことです。
地域連携薬局には、
・医療機関との情報共有
・在宅医療を受けるときの地域のほか薬局との連携
・安心・安全に服薬を続けられる体制づくり
などの役割が求められます。
ただし、薬局であればどこでも地域連携薬局として認められるわけではありません。
特定の条件を満たして申請をし、都道府県知事から認定を受けることによって「地域連携薬局」の名称を使うことができます。
そのため、認定を受けていない薬局は同じような名称であっても使うことができません。
地域連携薬局として認定されたら、その後は1年ごとの更新制となっており、認定薬局としての機能が適切に継続できているのか実績などが評価されます。
このように地域連携薬局が地域のかかりつけ薬局や薬剤師の役割を果たすことで、利用者が外来通院や入院、在宅医療、介護施設などどの療養環境であっても、また複数の疾患がある場合や複数の薬を服用している場合であっても、自分に合った環境で安全で継続的な内服をおこなえるという利用者のメリットがあります。
「地域連携薬局」と「健康サポート薬局」の違いは?
地域連携薬局と似たような機能をもつ薬局に「健康サポート薬局」があります。
2016年度から届出制度が始まっている健康サポート薬局のおもな機能は、
・地域住民の健康維持・増進にかかわる相談を受ける
・地域の医療機関と連携をして適切な受診をすすめる
・指導が必要な医薬品(低容量ピルなど)の取扱いに関する相談を受ける
・認知症の早期発見に努める
・ほかの薬の相談や管理栄養士による栄養相談を受ける
などがあります。
私たちが普段利用する「地域にある薬局」というイメージです。
健康サポート薬局には「かかりつけ薬剤師や薬局機能」に加えて、地域住民が病気にならないよう予防する役割の側面が大きく、健康増進につながる取り組みが求められています。
地域連携薬局と共通しているのは「かかりつけ機能」ですが、地域連携薬局では入退院時の医療機関への情報提供、在宅医療に応じられる体制など利用者が病気になったあとの役割に重点が置かれていると分けて考えると理解しやすいです。
つまり、地域連携薬局はこれまでの「かかりつけ薬剤師・薬局」や「健康サポート薬局」とは異なり、利用者の服薬指導や管理をするだけではなく、医療機関や他の薬局との情報共有や医薬品の提供などより広い意味で利用者を支援する取り組みが期待されています。
地域連携薬局に認定されるための条件
地域連携薬局として認定されるには主に18項目の認定基準を満たす必要があります。
- プライバシーに配慮した座って情報提供を受けられる設備
- ⾼齢者、障害者の円滑利⽤構造
- 地域包括ケアシステムに関する会議への継続的参加
- 地域の他の医療機関の薬剤師等への随時報告及び連絡する体制
- 地域の他の医療機関への情報提供回数(月平均30回以上)
- 地域の他の薬局に報告及び連絡することができる体制
- 開局時間外の相談への対応
- 休日・夜間の調剤の求めへの対応(地域の輪番制への参加等)
- 在庫として保管する医薬品を必要な場合に他の薬局開設者の薬局に提供する体制
- 麻薬の調剤応需体制
- 無菌製剤処理を実施できる体制(他薬局との協力体制の構築でも可)
- 医療安全対策の実施
- 常勤薬剤師の半数以上が一年以上常勤として勤務している
- 常勤薬剤師の半数以上が地域包括ケアシステムに関する研修を修了している
- 勤務薬剤師全員に14.に準ずる内容の研修を毎年計画的に受講させる
- 地域の他の医療提供施設への医薬品の適正使用に関する情報提供
- 居宅等における調剤並びに情報の提供及び薬学的知見に基づく指導の実績(月平均2回以上)
- 高度管理医療機器等販売業許可の取得
参考:厚生労働省『医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律(令和元年法律第63号)の概要』
参考:厚生労働省『薬機法改正 地域連携薬局と専門医療機関連携薬局』
認定基準のうち、以下の4つの項目が利用者に主に関わるポイントしてあげられます。
①プライバシーに配慮した施設の構造
②ほかの医療機関との情報連携体制
③地域における薬剤の安定供給体制
④在宅医療体制
これらのポイントを簡潔に説明します。
①プライバシーに配慮した施設の構造であるか
高齢者や障がい者、車椅子を使った利用者でも薬局店舗にスムーズに入ることができるかなど、地域連携薬局には手すりやスローブなどのバリアフリー構造であることが求められます。
さらに利用者が薬剤師から服薬指導などを受けるときに座って説明を落ち着いて聞くことができるか、プライバシーに配慮してパーテーションや間仕切りなどで区切られた相談窓口が十分なスペースで設けられているか、会話内容が周りに漏れないように配慮した設備構造も必要となります。
②ほかの医療機関との情報連携体制があるか
地域の医療機関や介護施設、他の薬局など利用者に関わる施設と十分に情報共有できる体制づくりや実績も認定基準のひとつです。
たとえば副作用が出やすい薬を服用する利用者が入退院をするときは服薬情報を医療機関に提供したり、在宅医療の際には主治医の指示などにもとづき、在宅での服薬状況を適切に把握して服薬や薬物療法などに必要な情報を医療機関に提供することなども求められます。
さらに地域包括ケアシステムの一員として、会議への参加や地域の医療機関に勤める薬剤師などに随時報告や連絡できる体制づくりがあるかも問われています。
③地域での薬剤の安定供給体制があるか
地域における他の薬局への「医療品供給体制の確保」も地域連携薬局の役割のひとつです。
他の薬局が地域連携薬局に対して医薬品の提供を求めた場合に適切に応じられるように体制を整備し、かつ地域連携薬局にどのくらい医薬品の在庫があるかなどの情報を周知させることも必要となります。
地域連携薬局が他の薬局や医療機関と連携し、地域で薬剤が安定的に提供されることが利用者への利益にもつながります。
ほかにも利用者と薬剤師が継続的に関わって支援できるように「継続して1年以上常勤として勤務している薬剤師の体制」などを整えることも要件に含まれます。
④在宅医療に必要な対応ができる体制があるか
在宅医療への取り組みとして、ある一定の実績があることも地域連携薬局には必要です。
在宅医療に対応できる体制づくりがあるか、たとえば過去1年間に月平均2回以上の在宅医療に関する取り組みがあるかどうかも問われます。
これには在宅医療における調剤や訪問診療の利用者への情報提供や薬剤に関する指導なども含まれ、訪問診療に関わる医療機関へも必要に応じて医療機器や衛生材料の提供などを行うことも要件に含まれます。
このように地域連携薬局に認定されるそれぞれの要件は簡単に満たせるものではありませんが、現在住んでいる地域に要件を満たす薬局があれば利用者としてのメリットがあることは間違いありません。
地域連携薬局に認定されるメリット
利用者として地域連携薬局に関わるメリットはたくさんありますが、一方で薬局側として地域連携薬局に認定されるメリットはあるのでしょうか?
まずは経済的なメリットですが、現時点においては地域連携薬局に認定されることで薬局に新たな報酬が生じることはありません。
一方で以下のようなメリットが期待されています。
・「地域連携薬局」の名称が使えることでほかの薬局と差別化できる
・利用者が薬局を選ぶときの目安のひとつになる
・地域連携薬局の認定をめざすことが薬局や薬剤師の成長につながる
これまでは利用者が通院している病院の近くや自宅から通いやすい立地にある薬局が選ばれがちでしたが、地域連携薬局のように専門性や機能が認められた薬局が認定されることで、利用者にとってより有益な薬局を選べるようになりました。
まさに2015年に示された「患者のための薬局ビジョン」のなかの概念が地域連携薬局で具体化されたといえるでしょう。
地域連携薬局はどこにあるの?【検索方法】
自分が住む地域にある地域連携薬局を検索するにはどうすればいいのでしょうか?
群馬県内で地域連携薬局を探すなら「ぐんま統合型医療情報システム」が便利です。
県内で地域連携薬局に認定されている薬局はまだ少ないものの、今後さらに認定薬局が増えることが期待されます。
先ほどの「ぐんま統合型医療情報システム」で嬬恋村周辺の薬局を検索をすると、村内から群馬原町までの薬局が約10件ほど表示されます。
ちなみに嬬恋村の薬局は
があり、日頃から利用される村民の方も多いと思います。
群馬県で認定薬局として申請手続きをするには地域連携薬局・専門医療機関連携薬局ともこちらを参照してください。
おわりに
今回は「認定薬局制度」や「地域連携薬局」についてまとめました。
群馬県内では地域連携薬局の数はまだ多くはなく、とくに認定要件である24時間365日対応やプライバシーに配慮した設備構造、地域会議への参加などすべてをクリアすることはかなりハードルは高いといえるでしょう。
また現在の新型コロナウイルス感染拡大の影響で地域ケア会議や退院時カンファレンスへの参加が難しい状況もあります。
そのような状況の中でも地域連携薬局は今後より求められる薬局の姿を示したものであり、とくにこれから需要がますます多くなる在宅医療に関わる分野では薬局が果たす役割は大きいことは間違いありません。
地域連携薬局や専門医療連携薬局のような存在が在宅医療には欠かせないものになるのは確実で、利用者だけでなく、在宅医療に関わる多くの医療関係者はこの制度に期待していると思います。
訪問看護ステーションのぞみのご利用者のなかにも複数の薬を服用しながら在宅療養される方も多く、服薬に関しては主治医や病院・薬局と常に連携しながら療養生活の支援を行なっています。
嬬恋村や周辺地域での訪問看護についてご質問等ありましたら、こちらよりお気軽にお問い合わせください。
訪問看護ステーションのぞみ
参考サイト
群馬県「特定の機能を有する薬局の認定制度」
※写真はすべてイメージです。