認知症に見られる症状や原因とは?どこに相談すればいいの?
こんにちは。
訪問看護ステーションのぞみです。
「認知症」という病気を理解している方も多いと思いますが、実際にどんな症状や原因があるのか疑問に思ったことはありませんか?
もしも、自分自身や家族が認知症になったら、どんな症状が出るのかしら?早期に発見できればいいんだけど…。
読者さん
認知症は誰もがなりうる疾患であり、このような不安や疑問を感じている方も少なくないはずです。
今回は、あらためて認知症とはどのような疾患で、どんな症状があるのかなどをまとめました。
認知症とはどんな疾患なの?
認知症とは、「一度正常に発達した知的な機能が、後天的な脳の障害によって持続的に低下し、日常生活や社会生活に支障をきたす状態」のことを言います。
さまざまな理由によって、脳の細胞が死んでしまう、働きが悪くなることで、記憶力や判断力が低下します。
それによって、本人の意識ははっきりしているのに日常生活や対人関係などの社会生活がうまく営めなくなってしまうのです。
認知症になる原因は?
認知症や認知症のような症状をきたす原因にある疾患として、アルツハイマー型認知症が最も多いと言われています。
しかし、アルツハイマー病以外にも以下のようないろいろな疾患や病態が認知症を引き起こす原因ととして存在します。
・変性疾患(アルツハイマー病型認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症など)
・脳血管障害(血管性認知症など)
・脳腫瘍
・外傷(慢性硬膜下血腫)
・髄液循環障害(正常圧水頭症) など
アルツハイマー型認知症などの疾患は根本的な治療は難しいと言われています。
そのため、認知症を疑って受診をした場合、まずは認知症の症状を引き起こしている疾患が何かを見極めて、その原因が治療が可能な疾患(特発性正常圧水頭症や慢性硬膜下血腫など)であれば、早期に治療を行うことが大切だと言われています。
原因疾患で多いのはアルツハイマー型認知症
日本において認知症の原因となる疾患で最も多いのはアルツハイマー型認知症で約6割で、以下が認知症の原因となる疾患の内訳になります。
・アルツハイマー型認知症 63%
・血管性認知症 15%
・レビー小体関連認知症 12%
・前頭側頭葉変性症 3%
・その他 7%
これらの「アルツハイマー型認知症」「血管性認知症」「レビー小体関連認知症」「前頭側頭葉変性症」の4つの疾患が、認知症全体の9割を占めていることになります。
これら4つの疾患について簡潔に説明します。
・アルツハイマー型認知症(女性に多い)
脳内にたまった異常なたんぱく質によって神経細胞が破壊されて脳に萎縮が起きます。
・血管性認知症(男性に多い)
高血圧や糖尿病などの生活習慣病が原因となり、脳梗塞や脳出血が起き、脳細胞に血液が十分に送られずに脳細胞が死んでしまいます。
・レビー小体型認知症(やや男性に多い)
脳内にレビー小体という特殊なタンパク質が溜まることで、脳の神経細胞が破壊されてしまいます。
・前頭側頭型認知症
脳の前頭葉や側頭葉で神経細胞が少なくなり、脳が萎縮します。
これらの4つの疾患が認知症患者の約9割を占めており、中でも「アルツハイマー型認知症」「血管性認知症」「レビー小型認知症」は3大認知症ともいわれています。
認知症の人はどのくらいいるの?
では、日本には認知症の人はどのくらいいるのでしょうか?
内閣府の「平成29年版高齢社会白書(概要版)」によると、2012年に認知症となった高齢者は462万人であり、65歳以上の高齢者の7人に1人だった、というデータがあります。
そして、将来的に認知症高齢者はどのくらい増えていくかの予測では、団塊の世代が75歳以上になる2025年には675万人(約5人に1人)となるとの予測もあるのです。
現時点では認知症にかかっている人を調べた全国調査はありませんが、自治体や病院などで行われた調査を参考にすると、65歳以上の高齢者の認知症にかかっている人の確率は3.8〜11.0%との報告もあります。
認知症にはどのような症状が現れるの?
認知症に共通して見られる症状として、記憶の障害や見当識障害などの「認知機能障害」と「行動・心理症状」があります。
それぞれの障害と、どのような症状が現れるのかを説明していきます。
記憶の障害
記憶の障害でよく見られるのが、「物事を覚えられなくなる・思い出せない」といったことです。
認知症の人は、新しいことを記憶できずについ先ほど聞いたことが思い出せません。
さらに病気が進行すると、覚えているはずだった記憶もなくなってしまいます。
見当識(けんとうしき)障害
見当識障害とは、現在の年月や時間、自分がいる場所など自分を取り囲む具体的な状況が把握できなくなる障害のことです。
認知症になると上述の記憶障害とともに早い時期から見られる障害ともいわれています。
例)
・時間の感覚がなくなり、長時間待ったり、何かの予定に合わせて準備をすることができなくなる
・季節に合った服装を選ぶことができなくなる
・方向感覚が薄らぎ、慣れた近所でも迷子になったり、夜間自宅でのトイレの場所が分からなくなったりする
・自分の年齢や家族の生死に関わる記憶がなくなってしまう
理解・判断力の障害
物事を理解したり、判断したりすることにも障害が生じます。
具体的には、考えるスピードが遅くなる・脳が一度に処理できる情報量が減るため二つのことをしようとすると混乱する・些細な変化に対応できない、などが挙げられます。
例)
・夫や妻が入院するなど状況が変わったことによって混乱してしまう
・自動販売機や交通機関の自動改札、銀行のATMなどが使えなくなる
・倹約を心がけているのに、高額な商品を購入してしまう
実行機能障害
実行機能障害とは、計画や段取りを立てて行動することができなくなることをいいます。
頭の中で計画を立てて、予想外のことが起きてもうまく対処して物事をスムーズに進める、といったことができなくなり、日常生活がうまく進まなくなります。
例)
・料理のレパートリーが減って限られたメニューしか作らなくなる
・買い物で同じものを何度も買ってしまう
感情表現の変化
認知症になると、その場の雰囲気や状況が読めず、周りの人が予期しない・思いがけない感情の反応を示すことがあります。
認知症によって記憶障害や見当識障害、理解・判断力の低下によって、周囲の情報を正しく理解・解釈ができなくなっているために起こります。
行動・心理症状
これまで本人が持っていた性格や住んでいた環境、人間関係などのいろいろな要因が重なり合って、以下のような行動面や心理面の問題が出てくることがあります。
これらが問題となり、病院へ受診に至るケースも少なくありません。
・不安やうつ状態:自信をなくし元気がなくなる
・暴言・暴力:自分の気持ちをうまく伝えられない、感情をコントロールできなくなる
・徘徊:外に出て行くが家に戻れなくなる
・妄想:自分の財産が狙われている・物を盗まれたなど事実でないことを思い込む
・幻覚:見えないものが見える、聞こえない物が聞こえる
このように、認知症ではさまざまな原因で脳の細胞が死んだり、働きが悪くなったりすることで、「記憶障害」「見当識障害」「理解・判断力の障害」「実行機能障害」「感情表現の変化」などが起こります。
それらに加えて、これまで本人が持っていた性格や素質、育った環境や人間関係などの要素が加わると、不安やうつ状態などの行動・心理症状が見られるようになるのです。
もしかして認知症かも?と思ったら専門家に相談を
自分自身や家族、身近な人たちに認知症のような症状が見られたら、1人で悩んだりせずに専門家に相談しましょう。
早期発見や早期治療によって、薬によって認知症の症状を遅らせることができたり、適切な看護・介護サービスを受けることもできます。
主な相談先としては、以下のようなところがあります。
・かかりつけの医師
・医療機関の「ものわすれ外来」
・地域包括支援センター
・電話相談
認知症は時間とともに進行していきます。
本人や家族だけで問題を抱えないように、早期に適切な治療やサポートを受けることが大切だといえるでしょう。
訪問看護ステーションのぞみでも、認知症の方への訪問看護を行っております。
訪問看護についてご質問がありましたら、こちらよりお気軽にお問い合わせください。
訪問看護ステーションのぞみ
参考文献
厚生労働省 みんなのメンタルヘルス 「認知症」
古和久朋,認知症の分類と診断,Jpn J Rehabil Med 2018;55;637-642
日本神経学会 認知症の定義
公益財団法人長寿科学振興財団 健康長寿ネット「認知症の中核症状」
公益財団法人長寿科学振興財団 健康長寿ネット「認知症の周辺症状」
厚生労働省 政策レポート 「認知症を理解する」
政府広報オンライン「もし、家族や自分が認知症になったら 知っておきたい認知症の基本」
厚生労働省 「認知症施策」